情報化社会、というと既に陳腐に聞こえる今日この頃ですが、情報流通の主役がインターネットに取って代わられてから、情報に対する価値判断の傾向は大きく変わりました。現代、その価値判断の中軸にあるのは「スピード」です。
あらゆることについて短期で結果を出すことが求められます。そのことが何かを行う際の、プレゼンテーションや結果の計測可能性の重要性として現れ、一発勝負で他人を説得してリソースを獲得しなければ何物も動かせないというような空気を生み出しました。
インターネット上でも、簡潔で含蓄のありそうな言葉が重宝されます。長くて精緻な文章は読まれなくなり、一言で会話のネタにできるような格言が好まれるようになりました。
例えば、「シンプル・イズ・ベスト」という言葉があります。とても分かりやすい格言のように思えますよね?これに限らず、シンプルを善とする格言はいろいろあって、英語圏では「KISSの原則」が有名です。
しかし、#The Piggydb Way的には思うのですが、シンプル・イズ・ベストほど文脈を伴わないと意味の無い格言もそうそうないんじゃないでしょうか。
シンプルというのは相対的な概念です。複雑さというものがあって初めて意味を成します。複雑さによって目的の達成を阻まれた経験のある人であれば誰でも、なんでもっとシンプルにならないのかという苛立ちを体験していると思います。
ただ、ここで問題となるのは、シンプルであるというのは単に要素が少なければいいということではなく、本質的な部分を残して不必要な部分を捨てるということです。これはトレードオフの伴う大量の選択肢の中を、悩みながら試行錯誤した経験のある人しか辿り着けない境地です。シンプルにするというのは、物事の本質を見抜いてその構造を抜き出す作業なのです。生半可なことではできません。
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