『6月14日の紅茶の味』

 マリナの本職は女優だ。オアシスの街であるレインボータウンは、交通の要所である。その周辺の砂漠の民は例え、直接オアシスの水を味わうことが出来なくても、たいていは間接的にオアシスの恩恵を受けている。マリナの場合は、オアシスからオアシスへ行商の旅を続けるキャラバンのお偉いさんを楽しませる舞台を演じることである。
 金銭の契約は無いが、衣装は貸してもらえるし、何より舞台上での飲み食いは全て本物だ。がっつきたくなるのを我慢して優雅な姫君を演じきる事ができれば、また次の舞台でも女優として呼んでもらえる。
 こんな機会でもなければ、結婚式でも着ることが出来ないようなドレスを身にまとい、当たり前のように水が添えられた食事を楽しみ、食後の紅茶を嗜む。まさに夢のような一時。

 【6月14日 今日の演目はまた"嘘と姫と魔法の絨毯"だった。マツリカ姫を演じられるのは、本当に幸せだと思う。でも、やっぱり、目の前におかわりだってしていい水があるのに、それを無視して、テーブルマナーで一杯の頭で羊のステーキを切り分けるのはツライなぁ。でも、今日は良く水を2杯で我慢できたね、アタシ偉いぞ。でも、冒頭のアラベルとの出会いはちょっと反省。演じるのは何度目でも、作中では初対面なんだから、もっと新鮮な驚きを表現しなくちゃ。……。反省終わり。それにしても今日の紅茶は美味しかったなぁ。『6月14日の紅茶の味』は本当にステキだったなぁ】

 日記を書く手を一休みして、マリナは繰り返しの回想にふけった。香り、色、茶葉、味、喉ごし、その時の気持ち等々、じっくりと思い出していく。そしてページをめくると、『6月14日の紅茶の味』と題して、ペンを動かしていく。

【『6月14日の紅茶の味』
 ー「今宵の茶葉はアッサムかしら? 芳醇な風味がミルクに良く合っているわ」
 ー甘い芳醇な香気は、香った者の心をほんのりと幸せにしてくれた。
 ー温かな人肌のような色が、白い陶器のカップに浮かぶ様は、心をおだやかにしてくれた。
 ーミルクを入れても、紅茶の旨みがちゃんと残っていた。ミルクの甘みと紅茶の旨みが恋人同士のように解けあって一対となって、舌の上を通る。飲み応えのある濃厚な味は、でも喉ごしはさわやか。飲み終えた後も口の中にじんわりと、ミルクティーの幸せが漂っていた。
 ー今日の紅茶の入れ方はロイヤルミルクティーと呼ばれる入れ方らしい。ロイヤル。まさに姫君が飲むに相応しい優雅さだったなぁ。
 ーーロイヤル、王族が飲むからじゃなくて、味そのものが優雅。だいたい、ミルクを入れても茶葉が負けないって言うのは凄いことだよね。高価なドレスを着ても、本人が負けないオーラをもっているお姫様みたいっていうことだよね。

 →『6月14日の紅茶の味』:『純白のドレスで着飾ったアッサム姫の温かな幸せを飲んだあなたにもお裾分け』】

【 『6月14日の 紅茶の味』 | davinci note】ではタイトル画像付きで全文が閲覧できます

以下のサイトで、#863 『6月14日の紅茶の味』 の全文をタイトル画像付きで公開していますので、宜しければ、一度訪問して頂ければ幸いです。
「-サボプリvol.1」とあるとおり、続き物となります。今回のお話で既に登場した『ドアコン(仮称)』に関する要素をストーリーの中心に、今後も様々なPiggydbや知的生産に関する要素をちりばめていく予定です。
サボプリシリーズは、ビギナーの目を意識して、読みやすく、分かりやすいように意識して創作させて頂きました。読者の方に読んでいて面白いと思ってもらえるように、ストーリーはオリジナリティよりも古典などを参考にしたベタな展開を重視しております。
※全文をpiggydb.jpにアップしていないのは、余り長文をアップするとご迷惑になるかなと思ったからです。ですので、marubinottoさんからご要望があれば、全文をアップさせて頂きます。

「サボプリ」ってどういう意味ですか?造語だとするとそのフラグメントを読んだ人しか意味が分からないので、読者を混乱させるだけのような気もしますが、、、
長文をアップするのは問題ないですが、読みづらくなると判断されたのなら、外部サイトへのリンクを張るのも一つの手だと思います。

「ボトムアップに立ち上がってくるコンセプト」と「現象に対応するコンセプトの組み換え」

magicianさん、移動中に読ませて頂いてますが、やはりこのフィクション形式は面白いですね。magicianさんが言わんとしているところが分かってきました。
magicianさんが「ドアコン」というコンセプトで表現しようとしていたのは、感情や感覚に対応するコンセプトの組み換え(再言語化)ですね。そのために、まず対象となる現象を表すフラグメントを用意しておく必要があると。それが「私はこのことについて分かりません、でもどこが分からないのかは分かっています」の意味ですね。
確かにこれは「ボトムアップに立ち上がってくるコンセプト」とは違うプロセスですが、「紅茶の味」を「純白のドレスで着飾ったアッサム姫の温かな幸せを飲んだあなたにもお裾分け」と表現するのはメタファーですので、結果としては新しいコンセプトを生み出しているわけです。なので、これもありなんですよね。興味深いです。
メタファーコンセプト指向発想法にとってきわめて重要な概念なので、近日中に詳しくまとめようかなと思っています。

作品を読んで頂いたことへの感謝の意 → ...

marubinottoさん、何よりも先に
magicianさん、移動中に読ませて頂いてますが、やはりこのフィクション形式は面白いですね。magicianさんが言わんとしているところが分かってきました。
と仰って頂き、本当にどうもありがとうございます。自分の書いた作品を読んで頂けること、面白いと思って頂けること、伝えたいことが理解されていること、本当に嬉しく思います。