#735 KJ法の失敗パターンから知識創造のノウハウを学ぶ   #The Piggydb Way     専門性の檻     恣意的な連想ゲーム     類似性の発見     10 years ago (owner) Document
この記事によれば、KJ法とは、
そもそもバラバラに集めた質的データを、いかに包括的な視点でそれらの関係性を組み立て、部分をみていたのではわからなかった新たな発見をするかという手法です。創造的に問題発見を行う発想法です。
KJ法を使いこなすための重要なポイントとしては以下の三つが挙げられるようです。
  1. コンテクストの共有
  2. 既存の知識体系からの脱却
  3. ラベルの選択(命名)
観察者それぞれで異なる見方をしてしまうので、おなじ事実をみても観察者によって解釈が異なる
まず「コンテクストの共有」ですが、材料となる情報について、解釈が人それぞれで、でたらめな連想ゲームのようになってしまうと、表面的な議論に終始することになってしまう、ということですね。この問題ついては、#654でも言及しています。Piggydbは個人で使うケースが多いと思いますので、材料の解釈については問題にならないでしょうが、そこから新しいコンセプトに結びつける過程では、やはり文脈というのが大事になってきます。というのは、既存の知識や社会の文脈を踏まえなければ、何が隠された問題なのかを判断することも出来ないからです。
KJ化の肝、統合化の失敗パターンは特に興味深いです。
* 似ているものをつなぐことをせず、カテゴリーに分けてしまう。
* 観察対象の人びとの行動のなかの体験そのものを想像せずに、カードに書かれた言葉のイメージだけで分類する。
* 最初に大きなグループに分けてから、小さなグループを作ろうとする。
* グループ化したものに、そのグループに含まれる特徴をすべて含んだ適切なラベルがつけられない。
* ラベルが貧弱なため、ラベルとラベル同士の類似が見つけられない。
「既存の知識体系からの脱却」というのは、ある意味、KJ法やPiggydbのそもそもの目的と言ってもよいのではないかと思います。既存のカテゴリーを横断するような重要な問題を発見する。言うのは簡単ですが、普段からそのような思考方法に親しんでいないと、なかなか難しいところです。
とにかく普段、思考の別化性能(違いで分ける)ばかりはたらかせている現代人は、似ているもの同士をつなげるという類化性能をはたらかせるのが苦手です ... 求められているのは、「分ける」ことではなく「つなぐ」ことなのに、表面(言葉)の同一性に眼を奪われて、人びとの行動や体験そのものの背後にある類似性に眼を向けることが苦手です。 ... 本来常に動き変化するものである物事をことばなどで固定化した形でとらえてしまい、動いている事物のなかの緒力に目を向けられないという現代人の傾向にもつながる話ですね。
こういった思考方法を鍛えるにはどうしたらいいでしょうか。一つの案としては、全く関係ない分野の本をいろいろと読んでみる、というのも一つの手ではないかと思います。私は、既存の知識体系に囚われることを「専門性の檻」と呼ぶことがあります。知識豊富な人でも、専門家を自認していたりすると、通常よりも強くその分野の知識体系に囚われていることが多いからです。
 
  • → + #736 コンテクストの言霊と友達として仲良くする   10 years ago (magician) Document