極端なケースを持ち出して、これが世の中の趨勢だと論を進めるやり方

昨今の雇用をめぐる議論に対する痛烈な批判にもなっているこの海老原節の小節の切れ具合をどうぞ:
・・・雇用の世界には、実にいろんなタイプの論者がいます。「世代間格差」をドグマにまで昇華させている人もいるし、小泉改革以降のネオリベ改革を憎み、保護と規制を強めろという、純粋な左バッターもいるし、逆に、最低賃金をなくして解雇自由にすれば、今の就職難は解決すると力説するばりばりの右バッターも存在する。
ただ、そうした個々の主義信条の違いを超えて、けっこう共通する傾向が一つあります。

それは、極端なケースを持ち出して、これが世の中の趨勢だと論を進めるやり方。

まあ、貧困とか格差なんかのマイナスを捉える場面では、それも仕方がないでしょう。世の中で起きている最悪のケースを捉え、まだそれが大多数でないうちに、警鐘を鳴らす。そのためには、強弁もやむなしと考えるからです。

しかし、納得がいかないのは、その逆です。最良のケースを取り上げ、それが当然だ、そうしなきゃダメだ、という論法。それも、「普通の人もがんばればああなれる」もしくは「こんなこともできない今の日本は最悪」と帰結するような説。

そんな茶番を、けっこうアカデミズム的には一目置かれるような科学者や経済学者(といっても雇用の門外漢!)が先導しているのです。そして、マスコミがそれに追随する。さらに、そのモデルケースとなるような偶発的人物を、時代の寵児に仕立て上げる。・・・
常見陽平『普通に働け』: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)