人工的なセレンディピティ(engineered serendipity)

そのザッカーマンが『Rewire』において指摘するのは、インターネットによりかつては考えられないほど世界中のニュースや知見に触れることが可能になり、実際グローバル化する世界において正しい判断を行うにはそれが必要なはずなのに、現実には外国より国内のニュース記事を優先し、ソーシャルネットワークにおいて自分に近い属性の人間とだけ接し、「フィルターバブル」に安住するインターネットユーザの姿です。

この内向き志向はインターネットだけでなく、実はテレビなど既存メディアにも当てはまることですが、現在のインターネットでは欲しいものは手に入るが、それが本当に必要なものとは限らず、ソーシャルネットワーク隆盛の「つながりの時代」において、本当に必要な情報が見えにくくなっているとザッカーマンは主張します。問題なのは情報へのアクセスではなく、むしろその情報に注意を向けさせること自体なのだと。

世界はまだフラットではなく、グローバリゼーションは始まったばかりで、我々にはインターネットをよりよいものにし、「つなぎ直し(Rewire)」を行う必要があると彼は説きます。

「つなぎ直し」を行うのに重要な存在として、異なる文化背景を翻訳する「橋渡し役(bridge figures)」と、自分と近い属性の人間とつながるだけでは得られない文脈や、普段考えることのない(しかし、実は自分と無関係でない)問題に注意を向けるための「人工的なセレンディピティ(engineered serendipity)」をザッカーマンは挙げます。
「閉じこもるインターネット」に対するセレンディピティの有効性 - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)