トップダウン式のインデックスタグと、ボトムアップ式のエッセンスタグの使い分け
タグを使わずに、フラグメントとつながりだけで情報を構成していると、情報収集の中心となっているフラグメントがあることに気づきます。それらのタイトルは、自分がフォーカスしている問題だったり、重要なコンセプトを表していたりします。こういったフラグメントを後からタグに変換して、もっと広範囲の情報を収集したり、表示したりできるようにすれば良いのではないかと考えるに至りました。
今までのタギングというのは、コンテンツの中から適当にキーワードをピックアップしたり、自分が知っているカテゴリーの中から選択する、というのが一般的だったのではないかと思います。タグを付ける際、後々どのようなキーワードでその情報を特定できれば便利だろうかと考えるわけですが、Piggydbの利用方法が探索的になればなるほど、その予想は外れる、あるいは利用者自身の成長によってタグツリーが陳腐化してしまう可能性が高くなります。
そこで、タグの役割を少し変えてみて、データベースの中から自然発生的に現れるタグ、あるいは利用者のフォーカスを表すためのタグという形にシフトさせたらどうなるだろう、というのが今回導入されたタグフラグメントで実験しようとしていることです。
「トップダウン式のインデックスタグ」
#270 つながりとタグの使い分け例: 「Table Tennis Videos」そして重要なのは、フラグメントに適用すべきタグは最も具体的なタグだけでOKだということです。ある選手のタグを試合フラグメントに貼り付ければ、そのフラグメントはその選手の所属国やスタイル、性別によっても同時に分類されることになります。
player
→ women
→→ FUKUHARA Ai
→ women
→→ FUKUHARA Ai
style
→ grip
→→ shakehand
→→→ FUKUHARA Ai
→ grip
→→ shakehand
→→→ FUKUHARA Ai
country
→ Japan
→→ JPN
→→→ FUKUHARA Ai
→ Japan
→→ JPN
→→→ FUKUHARA Ai
association
→ JPN
→→ FUKUHARA Ai
→ JPN
→→ FUKUHARA Ai
とFUKUHARA Ai選手は4つのルートタグ(player,style,country,association)をご先祖様に持っている訳です。直接の親タグには、(women,shakehand,JPN)の3つの親タグを持っています。又、JPNも国連加盟国としての分類、競技団体としての分類、2つの親を持っていることになります。
(サッカーの英国などは、国連加盟国としては一つの国家ですが、競技団体としては、英国四協会と呼ばれる4つの協会がFIFAに独立して登録されています。従って、FIFAワールドカップには4つの協会がそれぞれ別のチームとして予選に出場します。逆に、一つの国連加盟国から一チームしか出場できないオリンピックでは、現在ロンドン五輪に向けて、サッカーのチーム構成をどうするかが、国家的関心事となっています)
つまり、一度FUKUHARA Aiという固有名詞をタグに登録してしまえば、あとは各フラグメントにFUKUHARA Aiというタグをつけるだけで、上記の分類が全て一度に行われるわけです。他のタグツールのように、全てのフラグメントに個別でJPN,shakehand,womenといったタグを付ける必要がないのです! これは非常に操作が楽になります!!
一度作成したら、あとはタグそのものを分類すればOK! 一々個別のフラグメントのタグを修正する必要はないのです。例えば、年齢でもタグ付けをしたいと思ったら、birth1988というタグを、FUKUHARA Aiというタグの親タグに設定するだけでFUKUHARA Aiのタグがついた全てのフラグメントが、birth1988でも検索されるようになります!
この機能は、竜頭蛇尾型のモチベーション人間、いやいや、後で楽をするために最初の苦労は惜しまないタイプの人間にピッタリです。やる気のある最初に几帳面にタグを構成しておけば、実際に使う段階では、固有名詞を一つ選択するだけで整理された複数のタグが作成されるのです。これが他のタグソフトであれば、最初に几帳面にタグを構成してしまったら、実際に使用する段階でも、几帳面にタグを付けていかなければ、タグ構造が破綻してしまいます。
以上が、「トップダウン式のインデックスタグ」の概要になります。
「ボトムアップ式のエッセンスタグ」
- このフラグメントはどのようなタグで分類すべきなのか、などは気にせずに、とにかくフラグメントを貯めていく。
- ある程度、フラグメントがたまった段階で、フラグメント群を見なしてみて、中心になっているフラグメントを探す。
- そのフラグメントをタグフラグメント化して、関連するフラグメントをタグづけていく。
作業手順はこれだけですが、これだけでは、実際にイメージすることは難しいと思いますので、これから、いっしょにどんなタグやタグフラグメントが「ボトムアップ式のエッセンスタグ」となるのか、考えていきたいと思います。
- 人によって判断基準が異なる分類、主観的な分類。
これを言い換えた説明が、以下の作者様のコメントになるのだと思います。
#155 何のために「分類」するのか?ではPiggydbにおける「分類」とは何なのか? それは一言で言えば、「ユーザー自身が学習するため」の分類です。本来分類という作業は機械的にできるものではありません。先程書いたように知的負荷の高い作業です。検索のためのタグ付けであれば、単純にキーワード検索でもいいということになってしまうかもしれませんが、本当の分類(classification)は、そのキーワードが情報に含まれるかどうかとは無関係です。よって、Piggydbではユーザー自身が考えてタグ付けすることが重要です。
以下に、私の考える「ボトムアップ式のエッセンスタグ」の具体的な例を順不同でどんどん紹介してみます。
- 「こんなに暗い設定なのに何故か笑える、こんなドラマ、阿部サダヲじゃなきゃムリ!」
- 凄く面白かったドラマに関する感想を書いたブログ記事があったとします。
- そして、何作か違うタイトルなのに同じような感想のブログ記事を書いたことに気付きます。
- その時に、一番分かりやすい(とか一番最初に書いた等)ブログ記事のタイトルをタグフラグメント化します。
- そして、似た感想を持ったブログ記事を、作成したタグフラグメントでタグ付けしていきます。
- (※ブログ記事=フラグメント)
- 単純に阿部サダヲが出演したドラマに関するフラグメント全てにタグを付ける訳ではないです。
- あなたが自身が実際に見て、そう感じたドラマについて語ったフラグメントにのみこのタグを付けます。
- 逆に、例え阿部サダヲが出演していないドラマでも、同じような雰囲気を感じれば、このタグを付けます。
- そうなった場合、タグの名前をリネームすることもあります。
- リネームを繰り返し、自分のもやもやっとした感想が一つの言葉として整理され時こそ、記念すべき新たな概念の誕生の瞬間です。
- 明確なキーワードが思いつかないんだけど、なんとなく共通点を感じるフラグメント群、その中の一つのフラグメントをタグフラグメント化
- そうして感性でフラグメントを集めていくと、次第に具体的な共通点が明確なキーワードとなって浮かんでくる時が来る、かもしれない。
以下にライフハックに関する「ボトムアップ式のエッセンスタグ」を列挙してみます。
- 「楽しくなくちゃ続かない」
- 「シンプルイズベスト」
- 「コストパフォーマンスは重要。高い商品は気軽に消費出来ないから逆効果」
- 「オレの好み」
- 「いつか試してみたい」
そして、情報収集の中心となっているフラグメントというのが、例えば
というネット記事を(mhtファイルで)保存したフラグメントです。このネット記事を読んでから、ユビキタス・キャプチャーという考えを知り、その後しばらく、このフラグメントからつながりをつくる形でどんどんとユビキタス・キャプチャーに関するフラグメントを作成していきました。そして、2~3日後、これは一つのタグで分類するべき考え方だぞ、と感じたので、全ての起点となったネット記事を保存したフラグメントをそのままタグフラグメントとして使用することにしました。
では、ここで何故、固有名詞として、「ユビキタス・キャプチャー」というタグを作らなかったかについて説明します。
- ユビキタス・キャプチャーの他にもライフログやMoleskineなど、別の固有名詞が含まれているから。
- 正式なユビキタス・キャプチャーの方法論ではなく、自己流にアレンジされているから。
ということで、
- まず、 「全てを手帳に記録する」、ユビキタス・キャプチャーの実践 | Lifehacking.jp]というフラグメントをタグフラグメント化
- タイトルが長すぎるので、「全てを手帳に記録する」、ユビキタス・キャプチャーの実践」にリネーム
- インデックスタグとしてに「ユビキタス・キャプチャー」、「ライフログ」、「Moleskine」という固有名詞タグを作成。
- 自分の中で考え方が消化できてきたので、タグの名前を「書いて忘れる」にリネームする。
- 以後、「書いて忘れる」為のコツ、などに関するフラグメント全てに、このタグを付けていく。
以上、「ボトムアップ式のエッセンスタグ」についての概要と具体例でした。
いささか、長文になってしまいました。ここまで読んで頂きまして、どうもありがとうございます。いずれまたPiggydbを使い込んで頭が整理されてきたら、もっと短く要点を絞った説明ができるようになると思います。その時には、適切で説明しやすい具体例も見つかっていることだと思います。今の段階では、この助長な説明文でどうぞお許し下さい。この説明が、あなたの素敵なPiggydbライフの手助けになれば幸いです。
タクソノミーの呪縛から逃れる
私の説明はいささか抽象的な感じだったので、このような具体的な例に展開して頂けるのは有難いです。
「インデックスタグ」、「エッセンスタグ」という表現は面白いですね。この話をもうちょっと展開するとすれば、タグを付けるときに、より大勢の人が理解できるような分類体系を採用するか、データベースの文脈に沿った体系を採用するか、ということになるんじゃないかと思います。
いわゆる「フォークソノミー」は、大量の情報を共有しながら分類するので、前者の分類体系になるわけですが、Piggydbでは多くの場合、個人でデータベースを管理することになるので、他人に分かりやすい「インデックスタグ」にこだわる必要はありません。ただ、従来のタギングに慣れていると意識せずに「インデックスタグ」を作ってしまうのではないかと思います。なので「エッセンスタグ」に移行するためには、意識的に使い方を変えていく必要があります。
個人的には、「インデックスタグ」を追求すると、タクソノミー(taxonomy)の分野に足を踏み入れてしまうので、これは結構不毛なことではないかと考えたりしています。タクソノミーと言えば、海外のユーザーさんにNASAの開発したタクソノミーを紹介してもらったことがあります。
- NASA Taxonomy 2.0
Piggydbから提案したいのは、こういった万能の分類体系にこだわらず、「エッセンスタグ」で自分の問題にフォーカスした方がよい、ということです。
「エッセンスタグ」で重要なことを一つあげるとすれば、それはタグ名が必ずしも名詞である必要はなくて、まだ学習が足らずに「もやもや」の状態のときは、一つの「命題」がタグになり得るということです。その命題について情報を集めていく過程で、適切なキーワードを発見したり、あるいは発明したりできるかもしれないし、派生的なコンセプトを発見できるかもしれない。そのときに、いかに借り物のコンセプトを持ち込まないようにするか、というのがポイントで、これはできるだけ沢山の情報を集めてつながりを作る、ということにかかってくるのではないかと思います。
手書きのイメージをタグにできるPiggydbは凄いアイデアツールですね
私の説明はいささか抽象的な感じだったので、このような具体的な例に展開して頂けるのは有難いです。
日頃本当にお世話になっているPiggydbとその作者様へ、少しでも恩返しが出来たようで嬉しい限りです。
「インデックスタグ」、「エッセンスタグ」という表現は面白いですね。この話をもうちょっと展開するとすれば、タグを付けるときに、より大勢の人が理解できるような分類体系を採用するか、データベースの文脈に沿った体系を採用するか、ということになるんじゃないかと思います。
両者の使い分けについては、作者様のご指摘の通りだと私も思います。また、「インデックスタグ」、「エッセンスタグ」という考え方は、#394「 "タグ"は"エッセンス"を括ったもの」ぐらいから形になってきたのですが、それから約一ヶ月、試行錯誤と実践を経て、大分、考え方が整理されてきました。
タクソノミーの呪縛から逃れつつ、「インデックスタグ」を活用するためのコツは、一般的な固有名詞のみで親子タグを構成していく事かなと思います。もしくは、全文検索を信じて、「インデックスタグ」は基本的に使わないという割り切った考え方も有りだと思います。
Piggydbから提案したいのは、こういった万能の分類体系にこだわらず、「エッセンスタグ」で自分の問題にフォーカスした方がよい、ということです。
私もその意見に賛成です。「インデックスタグ」は丁寧に構築された場合でも、情報の検索性の向上にしかつながりません。しかし、「エッセンスタグ」を上手く積み重ねることが出来れば、素晴らしいアイデアの創造や、真の意味での情報の理解、知識の獲得につながっていくと思います。また、情報の検索性という意味でも、いわゆるQ&A系サイト(人力検索はてなやOKWave等)に近い(キーワード検索と質問文の中間ぐらいかな)有機的な情報の探し方が可能になっていくと思われます。
「エッセンスタグ」で重要なことを一つあげるとすれば、それはタグ名が必ずしも名詞である必要はなくて、まだ学習が足らずに「もやもや」の状態のときは、一つの「命題」がタグになり得るということです。
なるほど、「命題」ですか! これは的確な表現ですね。ちなみに、「命題」の状態の時は、その「タグ名」が上手く浮かばない状態のことが多いと思われます。その代わりに「もやもや」としたイメージがいくつかある。そういうときこそ「タグフラグメント」の出番ですね!
その命題について情報を集めていく過程で、適切なキーワードを発見したり、あるいは発明したりできるかもしれないし、派生的なコンセプトを発見できるかもしれない。そのときに、いかに借り物のコンセプトを持ち込まないようにするか、というのがポイントで、これはできるだけ沢山の情報を集めてつながりを作る、ということにかかってくるのではないかと思います。
「借り物のコンセプトを持ち込まないようにする」、これは確かに重要なポイントですね。その為には、タグフラグメントの名前に、「これはいったいどんな意味?」といった質問文や、シンプルに「命題A」など、「不必要な先入観を持たない仮タグ名」を活用していくのも一つのコツではないかと思います。