固有名詞をタグに使う
Chaos Piggydbで取り上げた「超」整理法という本に、「分類の単位として固有名詞を用いるべき」だという指摘があるのですが、これはPiggydbを利用する際にも有効な手法だと思います。
同じようなテーマを共有するフラグメントを登録していると、それらのフラグメントに対して、くり返し同じ組み合わせのタグを付けていたりする事がよくあると思います。こういった場合は、それらのタグを統合するような固有名詞があれば、そちらをタグにしておいた方が後々の変更に強くなります。
通常はタグとして抽象名詞や形容詞などを利用する場合が多いと思います。このようなタグはその時の主観的な判断によって選択されるので(例えば重要性に関することやジャンルなど)、知識が成長すると共に認識が改まり、変更が必要になる可能性が高くなります。しかし、固有名詞ではそういった心配をする必要がありません(固有名詞の呼称が変わったとしてもタグのリネームは容易です)。
Piggydbではタグに対してもタグ付けできるので、固有名詞を分類のクッションとして利用することができます。例えば、複数のフラグメントに固有名詞でないタグを付けていて、それらの分類に対する認識が変わった場合、該当するフラグメント全てに対して修正を施さなければならなくなります。しかし、フラグメントに固有名詞タグを付けている場合、その固有名詞タグに対する分類を修正するだけで済みます。
ちょっと分かりづらいと思うので、具体的な例で説明してみます。
Chaos Piggydbでは書籍の内容を引用したデータベースを作っていますが、これらのフラグメントには基本的に書籍の名前のタグが付いています。そして具体的な内容についての分類はこの書籍名タグに対して行っています。実は個人的に作っているプライベートのPiggydbでは、当初直接フラグメントに内容を表すタグを付けるようにしていました。しかし同じ書籍から引用される内容は当然のことながら、同じようなテーマに沿ったものが多く、同じ組み合わせのタグがくり返し現れます。もし、この組み合わせに一つタグを追加したくなった場合、該当する全てのフラグメントを見ながら、タグを追加していく必要があります。Piggydbではフラグメントの一括処理が比較的簡単にできるので、数が少なければそれほど大変な作業ではないと思うのですが、書籍名をタグにしていれば、そのタグに対してタグを追加するだけで済みます。
—
この記事を読んで私も「超」整理法、買って読みました。16年前の本で、PCを中心に書かれている第二章は流石に古さを感じさせますが、それ以外の部分は非常に示唆に富む内容で大いに刺激を受けました(この本読んだ後、まず会社の机・キャビネットに溜まっていた資料と名刺をどっさり捨てました)。ただ、固有名詞を分類の単位として用いるということについての直接の言及先は梅棹忠夫著の「知的生産の技術」だったんですね。ちょっと早とちり。
分類とつながりの効用
#155で既に論じられていることを再論するようで恐縮ですが、この間から考えていたことを書かせていただきます。
「『超』整理法」(野口悠紀雄著)では分類の問題点として次の各点をあげています。
- こうもり問題(暗闇でぶら下がっているコウモリのように、どこに分類したか、どこに分類すべきか分からなくなる)
- その他問題(その他分類ばかりがふくらむ)
- 誤入問題(間違えて分類してしまい見つけられなくなる)
- 分店時の在庫引き継ぎ問題(分類を細分化し、分家にする場合、一貫性を保とうとすると手間が半端でない)
- 君の名はシンドローム(何と名付けたか忘れてしまう)
そしてそのような問題点のある分類に精を出すぐらいなら、分類せずにファイル毎に時系列に並べておきなさいと説いています。
実際、紙媒体の書類を一定のスペース内で時系列に並べ、適宜いらないものを処分しながら、ところてん方式で押し出されたものを捨てる、取り出したものはまた最新ファイルとして手前に戻すという方法で管理すると、実際に使うものを使いたいときにピックアップできて大変便利です。
ただ、上記の各問題点はコンピュータとソフトウェアの高機能化により、電子ファイルについては相対的に問題が小さくなってきていることもまた事実かと思います(何といっても1993年に発行された書籍ですから)。コピーも検索も紙媒体に比較してとても簡単です。Piggydbなら負荷なくカテゴリを複数つけることができ、つながりと連動させればコウモリ問題の発生の頻度をかなり下げられます。少なくともどこに保存したのか分からないという状態は極めて発生しにくい状態です。となると少なくとも電子ファイルについては、分類することの問題点を論じることより、#155のように「何のために分類し、つながりをつけるのか」を考えた方が実があると思います。
—
フラグメントの登録数も多くなり最近感じたことは、タグを介してのフラグメント同士の結びつきは、
疎密度でいいのではないだろうかということです。
タグの機能は、少しでも関連のあるフラグメントを引き出せる糸。
ある主題を前提にフラグメントを関連付けるのは、新たな作業と思っています。
私の場合、ファイリングツールとしての使い方が主なため、必要なときに関連資料も含めて
引き出せることが主眼で使っております。
フラグメントに一つ一つ意味を持たせていると、フラグメントの登録自体がやっかいなことになり
いつまでたっても肝心のフラグメントが蓄積されず中途半端な状態になってしまう、というのが
私なりの印象です。
Piggydbの意図するところとずれているかもしれません。勝手な使い方をしております。
—
「タグを介してのフラグメント同士の結びつきは疎密度でいい」というのは、私も当初考えていたことで、タグの使い方としては標準的な部類に入るのではないかと思います。つまり、できるだけ抽象性の高いもの、広い範囲を示せる言葉をタグとして利用しておけば、分野を横断して情報を見ることができる、というものです。固有名詞も比較的分野を横断しやすい(特に人名)ので、この範疇に入るのではないでしょうか。
他方、例えばある具体的項目について、大きなツリーやネットワークを作ろうとしている場合、それらに共通するタグを付けておくと、後々ネットワークに参加するフラグメントをフラットで眺めたり、一括で処理(削除など)したりできるということもあります。例を挙げれば、書籍の内容からフラグメントのツリーを作るときに、それらに書籍名のタグを付けるなど。
フラグメントに一つ一つ意味を持たせていると、フラグメントの登録自体がやっかいなことになり